犬が顔をペロペロ舐めるのは、愛犬家とわんちゃんの大切なコミュニケーションの1つです。でも、顔についた化粧品を舐めてしまっても大丈夫なのか心配ですよね。
また、犬が顔を舐めてくるのはなぜ?犬が化粧品を舐めてもいいのか?平松獣医師監修の元、化粧品の影響なども解説します。
大手企業 勤務獣医師 院長
アイビー・ペットライティング代表
公益社団法人 日本アロマ環境協会認定アロマテラピーインストラクター
【得意分野】
皮膚疾患・内科疾患・アレルギー、アトピー
※本ページには広告が含まれていますが、公平な目線でご紹介しています。
犬が顔を舐める3つの理由
犬が人の顔や手などを舐める理由はケースによって異なりますが、大きく分けて以下の3つに分類されます。
犬が舐めることを、人の「触れる」に置き換えると、なぜ舐めるのか理由が見えてきますよ。
感情表現・信頼・服従
犬は、人の顔や口周りを舐めることで、愛情を表現したり、信頼している気持ちや服従心を表します。
帰宅した時、顔を舐めてくるのは「会いたかった」「嬉しいよ〜」と、めいっぱいの感情を表現しているんですね。人が撫でたり抱きしめたりするスキンシップと同じ意味を持ちます。
初対面の人の顔を舐めるのも、「遊ぼう」「仲良くしよう」という気持ちの表れです。
また、敬意を示すためにリーダー格の犬を舐めたり、挨拶したり「野生の名残」があるとも言われているんですよ。
喜んでいる姿は、もうほんと究極の癒しです。
欲求・要求
犬は飼い主さんに要求したい時にも、顔を舐めてきます。
「お腹がすいた」「遊んでほしい」「早くちょうだい」「早く行こう」など、自身の欲求を伝えたり要求の表れです。
また、大嫌いな病院へ行きたくない時、お手入れなど嫌なことをされている時も同じ、不安や嫌悪を表現します。「嫌だ」という感情を表したり、「やめてほしい」と伝えるためにも顔などを舐めるんです。
「怒らないで」と、怒っている飼い主さんをなだめるために舐める要求もあります。
確認するため
飼い主さんの顔や口元についた何らかの「ニオイの正体を確認」するため舐めるケースもあります。
口周りに食べ物がついているとき、特に油にはよく反応しますよね。化粧品やハンドクリーム、リップクリームの油分にも引きつけられます。
汗の塩分を好んで舐める犬もいます。
何か気になることの確認や、愛情表現や気持ちを伝えたい場合であることが多いでしょう。気になる匂いはクンクン嗅いで、舐めて問題ないものかどうかを確認しています。
何か知りたいことや伝えたいことがあるのだと、受け止めてあげましょう。
犬が顔につけた化粧品を舐めても大丈夫?
犬が、飼い主さんの顔につけた化粧品を舐めても、さほど大きな問題はありません。
ただし、化粧品には犬をはじめペットにとってよくない成分が含まれているため、日常的に舐めさせ続けていいとは言えません。少し舐めるだけとはいえ、毎日毎日舐め続ければ、たくさん舐めているのと変わらないからですね。
触れ合う時、犬が顔を舐めるのがわかっている時には、顔を洗って何もつけていない状態がベストです。
犬が舐めると危険な化粧品の成分
まず第一に、犬が舐めると危険な成分は、人にとっても危険な成分です。以下は一例です。
名称 | パラベン ジイソプロパノールアミン トルエンなど |
フェノキシエタノール ステアリルアルコールなど |
ホウ酸ナトリウム | ジブチルヒドロキシトルエン(BHT) ブチルヒドロキシアニソール(BHA) |
ウロカニン酸エチル メトキシケイヒ酸エチルヘキシル パラアミノ安息香酸 |
紫色201号401号 赤色104号218号 キサンチン色素など |
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目的 | 保存・防腐など | 殺菌や可溶化、ひきしめなど | ミツロウの乳化 | 酸化防止 | 紫外線吸収剤 | タール系着色料 |
使われている製品 | 化粧品全般 | 洗顔・化粧水・乳液・美容液・ ファンデーション・チーク・ アイシャドウなど |
クリーム・クレンジング リップクリームなど |
化粧品全般 | ファンデーション・日焼け止めなど | チーク・アイシャドウ・口紅など |
その他には、「アニス」や「ラベンダーストエカス」など、犬にとって危険な精油もあります。キシリトールや、マカデミアナッツ・アボカド・ブドウ・アロエ・お茶など、人には大丈夫でも、犬にとって良くない植物もあります。
有効成分は植物の種類によって異なります。かつて薬がふんだんになく、医学も今ほど発達していなかった時代には精油を薬代わりに利用していたこともあります。
正しい使用方法で用いると有用な働きをしてくれますが、使い方次第では害をもたらすこともあります。
ラベンダーは多くの場面で使用され、比較的安全な精油とされていますが、複数の種類があり犬にとって危険なものもあります。よく確認してください。
犬が化粧品を舐めた(飲んだ)時の対処法
犬が、直接化粧品を舐めてしまった(飲んでしまった)場合は、すぐに対処が必要です。
まずは、少しでも体内に入る量を減らすため、口の中を濡れたガーゼやタオルで拭って綺麗にしてください。
その後、動物病院へ電話し、以下を伝えて指示を仰ぎましょう。
- 犬の体重
- 舐めた(飲んだ)時間
- 舐めた(飲んだ)化粧品の量
- 舐めた(飲んだ)化粧品の名称
- 舐めた(飲んだ)化粧品の全成分
- 犬の様子
お水や牛乳を飲ませて、舐めた化粧品を「薄める」処置もありますが、自己判断でお水をむやみに飲ませてはいけません。
なぜなら、飲ませたお水と混ざり成分の吸収を早めてしまう恐れもあるからです。pH調整剤の目的で使われる「水酸化Ca」は、発熱反応が起きる可能性もあります。何も飲ませずすぐに動物病院に電話の上、診てもらいましょう。
また、除光液やマニキュアなど、ネイル関連の化粧品を舐めたり飲んだ場合は、危険が大きいため、急いで受診してくださいね。
誤飲時に、喉や食道に「化学やけど」を起こしてしまいますし、吐かせると再度「やけど」を起こしてしまいます。さらに揮発性物質は吐物が気管に入りやすく、少量でも入ると化学性肺炎や肺水腫を起こしやすいといわれています。
犬に顔を舐めさせるリスク
犬は地面を舐めたり、お尻や排泄物を舐めることもあり衛生的によくありません。「サルモネラ症」「パスツレラ症」や「レプトスピラ症」などの人畜共通感染症を引き起こすリスクがあります。
健康体なら大きな悪影響になる可能性は少ないものの、乳幼児や高齢者・妊婦さん・免疫が下がっている時などは、リスクを考慮しできるだけ舐めさせるのをやめましょう。
犬に顔を舐めさせない方法
犬に顔を舐めさせないために、「舐めてきたら、無言で立ち上がって離れて」みてください。
相手にすると、飼い主さんが喜んでいると勘違いし、もっと舐めてきてしまうため、無視するのが一番です。犬は、「舐めると相手にしてもらえない」と学習していくでしょう。
せっかくのコミュニケーションで、愛情表現を否定していることになってしまうと思うなら、代わりに手を舐めさせるのも良い方法です。
舐めにくる犬の口元に手を持っていき、そのまま手を舐めさせながら、顔から離していくといいですよ。その際には、ハンドクリームや日焼け止めを落としておいてくださいね。
最後に
家族である犬の健康を守るためにも、化粧をした顔を舐めさせるのは控えたいものですが、日頃すっぴんでいるわけにもいきません。
「顔を舐めさせるのはやめる躾をするべき」という方もいるでしょうが、考え方はさまざま。大切なコミュニケーションをやめるのも何だかなぁ…と思う方には、どうしても逃れられない問題です。
そこで、少しでも犬が舐めても安全な化粧品を使用すれば、いくぶんかは安心して触れ合えますね。