10年以上もランキング1位を獲得しているトイプードル。ふわふわで可愛らしい「くるくる巻き毛」が特徴ですが、お家に迎えたけど、毛質が巻き毛じゃないと思っている方も多いはず。
実はトイプードルの毛質には、個体差があり変化もします。トイプードルの毛質の種類や毛質の変化、換毛期などについて解説。実は誤った情報の本当のところ、成犬時巻毛になる子の見分け方など、どこよりも詳しい情報が満載です。
【資格】
犬猫美容師
トリマー歴20年
【所属】
おうちドックサロン✳︎kurumi
大阪市の自宅の一室でトリミングサロンを営みながら、シニア犬や持病を持つ犬がサロンに連れて行くことができないという問題解決のために、出張トリミング業も行っている。
そもそもトイプードルはなぜ巻き毛?
トイプードルは、スタンダードプードルが小型化された犬種です。
そして、スタンダードプードルの祖先は、15世紀頃 湖や川で活躍した狩猟犬(ウォータードッグ)『バルビー』と言われています。
水辺でも活躍しやすい揮発性のある巻き毛が特徴。毛がしっかりと巻いていることで、水辺や水中の木々などで体が傷つくのを防ぎ、水の中でも浮きやすく、冷たい水温から身を守っていました。
トイプードルは祖先の遺伝子を受け継いでいるため、くるくるの巻毛なんですね。
プードルの語源は、「水中でパチャパチャ跳ねる」という意味を持つ、ドイツ語の「Pudel(プデル)」で、フランスではアヒルの犬(duck dog)という意味の「カニーシュ(caniche)」と呼ばれています。
ちなみに、ビション・フリーゼの祖先も、バルビー(×マルチーズ)と言われていますよ。
トイプードルの2種類の毛質
一般的にトイプードルと聞いてイメージするのは、くるくる巻き毛のカーリーコートですが、トイプードルには大きく2種類のタイプの毛質があります。
- カーリーコート(巻き毛)の「くるくる巻いた毛質」
- コーテッドコート(直毛気味)と言われる「巻きが弱い」「軽いウェーブ」の毛質
クルクル巻いた毛質「カーリーコート」
一般的なイメージのくるんくるんの巻き毛のトイプードルは、とにかくカーリーヘアがキュートで可愛い!巻きには縮れたような被毛や、少し大きくカールした被毛など、個体差があります。
ハリコシがある巻き毛のトイプードルは、ボリュームのあるふわもこスタイルが楽しめて、Instagramやモデル犬のようなスタイル、人気のテディベアカットやアフロなど、なんでも思い通り!
巻き毛の子は、いわばどんな髪型だってできちゃうというメリットがあるんです。
毛量があれば、ビションフリーゼのように綿飴みたいなスタイルにもできます。
巻き毛のトイプードルのデメリットとして、「毛の密度がすごすぎて、根本が絡まり毛玉に気づかないこともあって大変」という声を聞いたことがあります。以下のような方もいますよ。
ミルの毛質はクセが強く、伸ばすと大変な事になるので、いつも短くなんです😢
例えば顔カットしたときに眉毛がボンっと出やすくて村山元総理みたいになりがち…とかですかね🤣
巻きの弱いストレートみたいな「コーテッドコート」?
巻きが弱いストレート気味の子は、直毛っぽく見えますが、細かく軽いウェーブがかかっていたり、少し大きめのうねりだったりさまざま。トリミングから日数が経過しても被毛は巻いてこないので、ふわふわなスタイルを維持しやすい毛質です。
巻き毛の子は、すぐくるくるに戻ってしまうため、見た目のふんわり感はかなり減少してしまいます。
もちろん、コシや毛量がなければふわふわ感は少なく、皮脂も出てきますし多少縮れがきつくなり、汚れもつきます。毛も伸びるので(1ヵ月1㎝~1.5㎝も)ボサボサになるのは同じです。
デメリットは毛が立ちにくく寝てしまうため、ぺっちゃんこになったり毛がスカスカで地肌が丸見え、モフモフ感もダウン。サマーカットにした場合は、さらに薄毛に見えてしまうところ。
うちの妹ちゃんのように少なくて柔らかすぎる毛質だと、さらにボサボサ。頭が割れるのも悩みの種。
どうにかしてコシを出したい、毛量を増やしたいと思う方もたくさんいるでしょう。犬用の発毛剤や育毛ローションなどもありますが、劇的な変化を出すのは不可能です。
話はそれますが、人間用の育毛剤ミノキシジルという成分は、犬にとって大変危険です。飼い主の枕カバーでさえも、中毒症状が出る恐れがあるのだそう。注意しなきゃですね。
実はコーテッドという毛質はありません(コーデッド・プードルという犬種ならいる)
「巻きが弱くストレート気味の毛質」=「コーテッド」と、まことしやかに囁かれていますが、実は「コーテッド」という毛質はありません。数人のトリマーさんに確認しても、以下の通り。
「コーデッド・プードル」(コーデド)という独立した犬種ならいます。
「コーデッドプードル」は、ドレッドヘアのように、被毛を縄状に束ねたスタイルで縄状に絡む羊毛状の毛質を持つ個体でした。
被毛が伸びると縄状に絡み合い、なおかつ人の手で整えて上記画像のようになります。
ブラッシングでのお手入れはできず、もつれた毛をほぐし縄のコードを整え、フエルト状にならないように維持。綺麗にシャンプーしにくい上、被毛の維持に何時間もかかる大変厄介なヘアースタイルなんです。
「コーデッドプードルのような縄状の被毛」は、人為的に作るのは至難の業。そのスタイルにする飼い主が少なくなり、毛質に大きな違いもないため、スタンダードプードルとコーデッドプードルは、1898年ケネルクラブで同一犬種と決定されました。
そのため、現在は犬種としての「コーデッド・プードル」はいません。(ショーで出陣しているコーデッドコードのスタンダードプードルはいます)
以下は、スタンダードプードルの被毛を「コーデッド」にしている動画ですが、逆毛を立て編み込むように縄状に絡めていっています。ヘアアレンジの際、逆毛を立てる人と同じような感じですね。
なぜ「コーテッド=直毛」と言われるようになったのか、考えられることを教えていただきました。
フラットコーテッドレトリバーという犬種がいます。「coated」と表記します。フラットレトリバーの被毛は平ら(Flat)でコーティングされた(Coated)で、直毛なんです。
一方プードルの方は「corded」です。
だから、色々とごちゃ混ぜになってしまっているんでは?と、他のトリマーさんと議論しました。
どう考えてもコーデットがストレート気味の毛を指すのはハテナです。
ネット検索をすると、多くのサイトやブログで「ウェーブがかかった直毛気味の毛質はコーテッドと言う」「直毛気味の被毛を持つトイプードル(コーテッド)は日本ではあまり見られない希少な毛質だ」と出てきます。
ですが…
- 直毛のフラットコーテッドレトリバーの「コーテッド」と、プードルの「コーデッド」
- コーデッドプードルは、日本では希少
これらがいっしょくたになって、どこかで発信された内容の引用や転載を繰り返し、いつの間にかそのような話しになってしまったのでしょうか。
うちの2匹もそうですし、ストレート気味のトイプードルをかなり頻繁に見かけるので、希少なわけないって。これで納得。スッキリしました。
他にも、コーデッドプードルに似たモップのような縄状になる犬種がいます。「プーリー」や「コモンドール」、「ベルガマスコ・シェパード・ドッグ」も羊毛のような被毛で、伸びると絡み合って縄状のコードのようになります。
トイプードルの毛質は全部で5種類ある
本当は、トイプードルの毛質は2種類ではなく、5種類あります。
直毛
直毛は、毛根からまっすぐ生えている毛です。まっすぐ滑らかで、艶があります。
波状毛(はじょうもう)
波状毛は、波のように左右交互にうねりのある毛質です。大きいウェーブから細かなウェーブまでさまざま。人の場合は「天然パーマ」と言われます。
縮毛(しゅくもう)
縮毛は、縮れているタイプの毛です。毛根の歪みが原因になっていることが多く、ザラザラした感触です。
捻転毛(ねんてんもう)
捻転毛は、くるくるとねじれた毛です。指で毛を挟んで滑らせると、プツプツとした感触がわかります。ねじれているため、ツヤがないのが特徴です。ブラッシングで引っかかりやすく、切れ毛の原因にもなりますよ。
連珠毛(れんじゅもう)
連珠毛は、数珠をつないだように、太くなったり細くなったりしている毛です。ボコボコしているため、細い部分で毛が折れやすく、切れ毛の原因にもなります。
ビーズ髪/ビーズヘアとも言われます。
波状毛と捻転毛を比較してみた
匿名くんの毛をアップで見ると、白髪のような白い毛がちらほらとありました。他の毛は、小さく波打つ波状毛だと思われます。
白い毛は巻きが強く、触ってみると硬くてザラザラ。ねじれているように感じたので捻転毛かも。
通常の毛と白い毛を比べてみると、太さが全然違う。普通の毛は細すぎて見えないくらい。全身この被毛なら、今より確実にボリュームアップするのは間違いありません。
根本には、濃いカラーの毛も見られます。
匿名くんは、4カ月頃から被毛の色がかなり薄くなってきました。初めは焦げ茶色だったのに、退色ってこんなに早いんだーと感じていましたそれが残っているのか、また別の毛なのかはわかりませんが、濃いカラーの毛も巻きが強い感じ。そして、明らかに太いです。
トイプードルの毛質に違いがある理由
トイプードルの毛質は親から受け継ぐ遺伝子によって決まりますが、何世代も前の「隔世遺伝」となる可能性も。
祖先の巻き毛は700年も800年も前の血筋の上、繰り返し品種改良が加えられていますし、掛け合わせによって巻き具合/柔らかさ/毛量など個体差もあります。
被毛の巻き具合は、毛根で毛が作られる時に、すでに決められています。毛穴の角度や曲がった毛根の形が大きく関係しているんですよ。
※ コルテックスは、毛を作る繊維状のタンパク質 毛の80~95%を占める
トイプードルは巻き毛でないとダメ?なぜ直毛だと「大丈夫」って言われるの?
「トイプードルは巻き毛でないとダメなのか?」という疑問を持つ飼い主さんがいます。
毛がフワフワで巻きが弱く、後ろ姿はポメラニアンのようです。
私たち家族は、これがまたたまらなくかわいいと思っているのですが、何人かの方から「巻きが弱いけど、成長したら毛質が変わって巻きが強くなるから大丈夫よ。」と、聞いてもいないのに声をかけられました。
「大丈夫」ということは、プードルは巻きが強いほうがいいということなんですよね?引用:Yahoo!知恵袋
トイプードルの被毛の巻きが強いと、カットラインが入りやすく毛が立ちやすいため、可愛いもふもふのスタイルが作りやすいんです。
「手で押すと押し返される弾力」が、より綺麗なスタイルを作り上げます。
綺麗な正円は、どの方向に対しても動きやすく、いびつだと動きが制限されるという特徴があります。
CМでもよく見かけるサラサラロングヘアーの人は髪があちこちになびきますよね。犬に置き換えるとストレートのヨーキーフルコートだとブルブルーっとしたら毛があっちゃこっちゃにいきます。
プードルのしっかり巻きのある子が同じ長さにしたとしてブルブル~っとしても…想像つきますよね。
だから、いびつな形の「巻き毛」の方がふわもこ・もふもふに整うんです。
トイプードルの子犬はみんな直毛?いつから巻毛に変わる?
多くのトイプードルのパピー期(子犬)の被毛は、大変柔らかく直毛気味です。トイプードルを初めて飼う方は、くるくるの巻き毛でないことを疑問に感じることも多いでしょう。
トイプードルの毛は子犬の時はあまりカールがかかってないのでしょうか?
引用:Yahoo!知恵袋
基本的にパピーちゃんは、かなり柔らかめの被毛がほとんど。赤ちゃんならではですが、その中でも巻いているか直毛気味か、毛質に差があります。
直毛気味の子が、将来巻き毛に変わるかどうかは成長してみなければわかりませんが、成犬になる前から少しずつ毛質は変化していきます。
※ トイプードルは、1歳で成犬(人間換算17歳)
巻き毛⇒直毛へ 直毛⇒巻き毛への変化
大人の毛になる時(子犬の毛の生え変わり)
子犬の毛の生え変わり時には、毛質に変化が生じます。ただ、全く変わらない子もいれば、直毛気味の被毛が完全にクルクルヘアになるケースもあります。
うちの匿名くんの場合、部位によって変化が違いました。
- 頭部の巻き毛 ⇒ 巻きが弱くなりストレート気味に
- 胸元やお尻などはストレート ⇒ くるんくるんの巻き毛に
子犬で直毛気味の子でも、成犬に近づくにつれ、多少は巻きが強くなりコシが出てくるのが一般的。ある程度は、パピーの頃より巻いて硬くなると考えていいでしょう。
トイプードルが大人の毛に変化するのは、8ヶ月〜1歳半ほど。
個体差はありますが、生後5,6ヶ月頃から少しずつ変化します。大人への毛質の変化は、成熟した個体になったという証でもありますね。
ですが、それ以降も多少は変わる可能性あり。
換毛期
犬の換毛期は、暑くなる前の「春」と、寒くなる前の「秋」くらい。上記の毛周期のサイクルを経て被毛が生え変わります。
シングルコートのトイプードルは、季節性の換毛期はありませんが、「換毛期がない」わけではありません。1年を通して徐々に生え変わります。
そして、毛が生え変わるタイミング毛質が変化する場合もあります。巻きが強くなったり弱くなったりすることがあるんです。
ちなみに、シングルコートであっても、多少はアンダーコートも持っているんですよ。
その他毛質が変わる要因
巻き毛でも直毛でも、以下のようにさまざまな原因で、毛穴や皮膚、被毛がダメージを受け、毛質が変わってしまう場合もあります。
- 栄養状態や水分摂取量
- シャンプーやドライヤー、ブラッシングのやり方
- 洋服や普段寝ているベッドなどの摩擦
- 日照時間/紫外線の影響
- 運動不足やコミュニケーション不足などのストレス
自律神経が乱れ血流の悪化や消化吸収不良などで、これまでのキレイな巻き毛がパサパサになったり、被毛が硬くなったり毛艶が悪くなる場合があるんですよ。
人も枝毛切れ毛ができると、カールが綺麗にまとまらなかったり、ストレートでもチリ毛などで綺麗には見えませんよね。トイプードルも同じです。
毛は死滅細胞なので、そこに何か刺激を加えたからといって変化する、、というのはないんじゃないかな?と。
ただし、バリカンを強く押し当て毛根を刺激すれば、変わるかもしれません。先にお話した毛穴と毛根の部分を考えれば、理解できますよね。
バリカンで毛質が変わるかどうか、詳しくはまたあらためてご紹介しますね。
トイプードルが巻き毛か直毛か?を見分ける方法
1代祖2代祖 合計6頭の毛質を見る
トイプードルの巻き毛と直毛を見分ける方法は、ほぼないと言っても過言ではありません。なぜなら、これまでお話してきたように、毛質はさまざまな原因で変わるからです。
強いて言うなら、パパ方のおじぃちゃんおばぁちゃん、ママ方のおじぃちゃんおばぁちゃん、パパママの毛を確認すること。
トイプードルの成犬時のサイズが「1代祖(父犬・母犬)2代祖(父犬の祖父母犬・母犬の祖父母犬)合計6頭」で決まると言われているように、毛質に対しても同じようなことが言えます。
つまり、パパ方のおじぃちゃんおばぁちゃん、ママ方のおじぃちゃんおばぁちゃん、パパママが巻き毛だと、高い確率で巻き毛になる。パパママがくるくるの巻き毛でも、おじぃちゃんが直毛気味の被毛だと、巻きがソフトになったり。
逆に、パパママが直毛気味でも、おじぃちゃんおばぁちゃんがクルクルの巻き毛だと、カールが強かったりするケースもあるでしょう。
「祖先返り※」というものがあるように、何世代も前の「隔世遺伝」の可能性もあり、絶対ではありません。
※「祖先返り」 親には現れていない祖先が持っていた遺伝上の特徴が、子孫の個体に現れること
毛が太く弾力のある爆毛の子を選ぶ
成犬時に、強い巻き毛を希望するなら、その子自体もくるくるで爆毛の子を選ぶことです。
パピーの頃は毛が柔らかいため、なかなか見分けることはできませんが、毛が太く弾力のある爆毛の子を選ぶと「巻き毛の成犬」になる可能性があります。
お腹の毛が濃いと良いとも言われますが、うちの場合はあてになりませんでした。
ブラック/ホワイトはしっかりした巻き毛の印象がある
白/黒/ブラウンのトイプードルは、プードルの基本色だから毛質が安定しているとも言うように、色も多少関係があるようです。
レッド、アプリコットが、柔らかく直毛気味の子が多いように感じます。
ワタシは、下の子を迎える際「絶対に毛量のある子がいい」と決めていたのに、他に毛量のある子がいる中、ときめいたのはこの子だけで「毛量なんてもうどっちだっていい」という気持ちになって迎え入れることになりました。
購入の手続きをしている時、何気に「この子、毛量は…」と言いかけると「多い方ですよ~。しっかりしているし。」と、少し離れた場所から言う女性。
隣の女性は「あの人、トリマーなので確実です!(^^)!」と言いました。
素人のワタシが見ても、薄毛だしコシがない。絶対毛質で悩むだろうと予測できたのに、なぜ嘘をつく?信じ込んでいたら、今頃全然毛が多くならないと嘆いていたかも。
最後に
「うちのトイプードルはストレートで巻き毛にならない」「すぐにクルクルと巻いてふわふわにならない」など、さまざまな悩みがあるでしょうが、それぞれの毛質や毛量に合ったカットのやり方もあります。
飼い主さんの感性と一致するトリマーさんを見つけると、悩みが解決するかもしれません。
同じスタイルでも、ほんの少~し違うだけで印象は全く変わりますよ。
他の子と比べてしまい、違うに悩む方もいますが、個性と捉えてカットやお手入れを楽しみましょう。